ICOで注目を集めるエストニアって?ICOやエストコインの現状

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バルト海の東側に位置するエストニアは豊かな自然に恵まれ、世界遺産都市でもある首都タリンは北ヨーロッパの中でも有数の美しさを誇っています。人口は約130万人で面積は日本の約9分の1ほどしかない小さな国ですが、国家を挙げて先進的なITインフラ構築しています。

ところで、実はエストニアは知る人ぞ知る、世界有数のIT国家でもあることを知っていましたか。

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安倍晋三内閣総理大臣もエストニアを訪問

2018年1月、日本の安倍晋三内閣総理大臣はエストニアを訪問し、ユリ・ラタス・エストニア共和国首相と会談を行ないました。この際、租税条約の早期発効に向けた手続や両国間の投資・経済関係を促進のほかに、IT分野での協力についても意見交換を行っています。

これは日本が2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、サイバー攻撃への対策が急務となっている中、大西洋条約機構(NATO)のサイバー防衛協力センターが置かれるなど、サイバーセキュリティーにも注力しているエストニアと連携を深めることが目的でした。

このように、先進的IT国家として、エストニアは日本政府にも注目されているのです。

 

エストニアのIT先進国としての土壌

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ではなぜ、北欧の小さな国でありながら、エストニアはIT先進国として日本をはじめ世界的に注目されるまでになったのでしょう。

バルト海のエストニア、ラトビア、リトアニアのバルト三国はかつてはソビエト連邦の構成国でした。ソ連はコメコン経済(経済援助会議)という経済援助体制を敷いていて、連邦ごとに産業を割り当て、相互に経済援助を行っていました。

バルト三国においては、ラトビアが自動車産業や造船業、リトアニアが電子産業といったような各産業分野が割り当てられ、エストニアにはIT関連産業が割り当てられたことによって、人工知能など最先端技術を研究するサイバネティクス研究所やデータセンターなどが置かれたのです。

ソ連崩壊後のエストニアのスタンス

ソ連崩壊後も研究所などに所属していた技術者たちはエストニアに残ったことから、この遺産を活用し、国内外の最新技術を取り入れながらIT国家としての基盤を築いてきました。

また、ソ連崩壊後、独立を果たしたエストニアは、これまでに幾度も政権が交代したものの、IT推進の方針は揺らぐことがありませんでした。

さらには、エストニアの有能な技術者たちを活用しようと隣国のフィンランドがエストニアに進出したことによる経済効果も大きく影響し、IT先進国へと急速な発展を遂げたのです。

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エストニアはIT教育も盛んにおこなわれている

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国を挙げてIT産業の発展を推進するエストニアにおいては、IT教育も盛んにおこなわれています。

まず、小学生から高校生までを対象にした全国レベルの初等・中等のIT教育「プログラミング・タイガー(ProgeTiiger)」によってテクノロジーに関する基礎知識やスキルを醸成しています。

これを推進しているのは政府関連組織の「Tiger Leap基金」で、学校へのコンピュータの導入やネットワークインフラに整備に力を注いできました。

IT教育における高い学力を誇るエストニア

この教育戦略によってエストニアは国際学力ランキング(PISA)の学力テストにおいて科学的知識の分野で1位 シンガポール、2位 日本に次ぐ、3位となっています。

また、エストニアでは早期のIT教育にとどまらず、高等教育向けの「IKTP」も実施して、大学レベルでのIT教育にも注力しています。これは、日本と同様に少子化が進むエストニアにあって、大学におけるIT分野の人材を確保し、留学生を増やすことが目的で、講師や研究者にとっても魅力的な環境です。

たとえば留学生は就労ビザなしで働くことができ、卒業後も半年間はエストニアに滞在することが認められているので、そのままエストニアに定着することも少なくありません。

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エストニアの代表的なIT企業とは?|skypeもエストニアで生まれたサービス!

普段はあまり意識することはないかもしれませんが、日本でもエストニアの企業が提供するサービスは多くの人に利用されています。代表的なところでは、インターネット電話サービスの「skype」です。現在は米国のマイクロソフトに売却されていますが、この「skype」はエストニアの首都タリンで生まれたものでした。

また、最近日本でも利用が広まりつつある格安海外送金サービスの「Transfer wise」も、創業者のひとりであるタアベット・ヒンリクス氏はエストニア出身で、「skype」の立ち上げにもかかわった人物です。この「Transfer wise」は通常の銀行を利用した海外送金では手数料が高いため、留学やワーキングホリデーで海外に滞在する学生に好評のサービスとなっています。

このほか、外国語の適応学習ソフト「Lingvist」もエストニアの企業が開発したものです。

短期間で最大の成長を遂げるスタートアップ企業

これらの企業の多くは「スタートアップ企業」と呼ばれ、短期間で急激に成長を遂げ、イノベーションを意識して、それまで市場に存在しなかった斬新なビジネスを展開するのが特徴です。

「スタートアップ企業」はベンチャー企業とは異なり、常に出口戦略(EXIT)を意識していて、長期間経営を安定させるのではなく、短期間で最大の成長を遂げ、ピーク時に撤退することを目指しています。

このため、時にはM&Aなどで会社や事業を売却することがありますが、「skype」はその一例といっていいでしょう。

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エストニアの電子政府化(e-Estonia)

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教育や産業分野においてIT化が進んでいるエストニアにあっては、政府や行政の機能も電子化されています。実際にはすでに行政サービスの99%が電子化されていて、紙の書類による手続きが必要なのは結婚、離婚、不動産の売却のみとなっています。つまり、これ以外の手続きはすべて電子IDと電子サインによって手続きが完了するのです。

たとえば政治面では、選挙の投票は「i-voting」と呼ばれる電子投票システムを利用することで、インターネット接続されているデバイスさえあれば有権者はどこからでも投票が可能です。

また、「e-cabinet」という電子閣議システムが導入されていて、あらかじめ閣僚が議題となる情報にアクセスすることで、閣議前に議題に対するスタンスを決定することができ、閣議の時間も短縮できるようになっています。

また、行政面では納税などの手続きや、犯罪の通報などもすべて電子化されていて、大幅に行政運営のコストを削減することに成功しています。

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国民という概念が変わるエストニアの「e-residency」

このように、エストニアには官民あわせて2,500以上もの電子サービスがありますが、行政サービスの電子化ばかりでなく、起業家や外資の誘致にも注力しています。そこで実施されているのが電子居住者システム「e-residency」です。

「e-residency」のコンセプトは「国境のない国を目指す」というもので、2014年にエストニア政府によって開始されたプロジェクトです。実際には、申請者にスマートカードを発行し、これを持ってさえいればエストニアにいなくても国内の電子サービスを利用できる電子居住者(e-resident)になれるというものです。

具体的には、国外からでもエストニアで会社設立や銀行法人口座開設が可能となり、エストニア政府に対する税務申告や提出書類なども電子署名で交わすことで場所に依存せずに行うことができます。

デメリットとしては、申請に100ユーロほどが必要なことや、国外の場合にはエストニア大使館に足を運ばなくてはならないことが挙げられますが、電子居住者になってさえいれば、エストニアに一度も訪れなくても法人登記することも可能です。

ちなみに、この「e-residency」は安倍晋三内閣総理大臣も参加していることでも知られています。

 

エストニアがICOにより仮想通貨エストコインを発行?

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さまざまな電子政府化の一環として、世界有数のIT国家であるエストニアではエストコイン(Estcoins)と呼ばれる世界初の国家による仮想通貨の発行の構想もあります。

これはエストニアの電子通貨計画で、資金調達の方法は現在注目が集まっているICO(Initial Coin Offering:新規仮想通貨公開)によるものです。

ICOとは仮想通貨を使用した資金調達手段

ICOとはクラウドセールやプレセールとも呼ばれ、資金調達手段として株式の分野の上場を指すIPO(Initial Public Offering:新規株式公開)と類似している部分もあります。

つまり、株式では上場が行われると誰でもその株を取引できるようになりますが、ICOでは仮想通貨が取引できるようになります。

従来の資金調達方法とICOでの資金調達の違い

これまでICO以外で一般的に企業や事業プロジェクトが資金調達をする場合には、金融機関からの借り入れを行うか、新株を発行して出資を募るかのいずれかの方法がとられてきました。

ただ、ICO以外の資金調達では、信用力が低く与信能力がないと、必要な資金が調達できなかったり、借入利率が高くなってしまいます。

一方、ICOならこのような課題を抱えることなく比較的簡単に資金調達が可能です。具体的にICOで資金調達するには、まず仮想通貨の発行を周知しなければなりませんが、通常は資金調達する前に「ホワイトペーパー」と呼ばれる目論見書を発行し、魅力の喧伝を行います。

その後「オファー」と呼ばれる内容書を提示し、投資家は、ICOを控えてプロジェクトの全容を理解することができるようになります。

しかし、ICOは証券市場のような基準がないため、ICOをする側が詳細な条件を規定して開示することになります。

ICOのメリットとは?資金調達側と投資家側双方のメリット

資金調達側のICOのメリットとしては、まず、集めた資金に対して配当を支払う必要がなく、株式のように株を発行する必要もありません。

また、ICOであれば資金調達において利子を支払う必要もなく、投資対象となる事業の価値を投資家に提示しなくてもよいほか、議決権が付与されないため、経営に関与されるリスクも低くなります。

さらにICOはインターネットが利用されるのでグローバルなマーケットでの資金調達が可能です。このためICOなら、比較的資金調達が困難なベンチャー企業や個人でも資金が調達しやすくなります。そして、ICOの場合、支払いはインターネット上の仮想通貨で払い込みが完結できます。

一方、投資家側は、ICOであれば小額から資金提供が可能で、なおかついつでも転売することができます。特にスタートアップ企業に投資する場合には、ICOは創業から期間が経過していないほど、ハイリスクではあるもののハイリターンが期待できます。

ICOとIPOはどう違う?投資側にはハイリスクなICO

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ICOとIPOは類似していますが異なる部分もあります。まず、ICOは新規上場するための証券会社の協力が必要ありません。また、ICOでは資金調達を得るための事業計画書や直近決算の開示の必要もなく、資金調達のコストを大幅に削減することができます。

ただし、ICOは手続きが簡便であるがゆえに、投資側を保護するルールが未整備です。

このため、ICOは投資側にとってはリスクの高い取引で、ICOによる取引は投資家が自己責任で行わなければなりません。

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エストコインはまだ構想段階!

エストコインは構想段階のため、このICOは現段階で行われておらず、当然、購入することもできません。

一時、エストニアの政府がエストコインを発行するためにICOを開始するということが話題になりましたが、正確には国家が仮想通貨を発行した場合に何が起こるのかという問題提起をしたにすぎず、開発に着手したわけでもありません。

エストコインのICOの可能性は?

エストコインのICOが行われる可能性ですが、ECB(欧州中央銀行)のドラギ総裁は、ユーロ圏の各国は独自に通貨を作り出すことはできないとした上で、ユーロ圏の通貨はあくまでもユーロであると明言。エストニアの電子化担当相コージュス氏もエストコインのICOを行い、ユーロの代替通貨を提供することはないとしています。

しかしながら、スペインからの独立問題がくすぶるカタルーニャが独自の仮想通貨のICOを検討しているのが報じられたり、ベネズエラは石油などを担保とした「petro(ペトロ)」と呼ばれる仮想通貨のICOを発表していたりすることなどから、エストコインについてもICOの可能性はゼロとはいえません。

エストコインのICOには信頼性を担保するものが必要

仮に、エストコインのICOが行われるとしても、エストコインが通貨である以上ペトロのように信頼性を担保するものがなくては価値を得られません。

つまり、金本位制の時代のポンドやドルがその価値を金で担保していたように、あるいは円が日本経済の信用によって価値を担保しているように、エストコインも価値を担保する背景が必要です。

このことについてエストニア政府は、エストコインのICOが実現した場合、同額のユーロを政府自身が担保するという構想を明らかにしています。つまり、エストコインは「ユーロ本位制」とでもいうべき仮想通貨といえるのです。

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いかがでしょうか。エストニアは諸国でありながらも、さまざまな分野で電子化が推進されているIT先進国です。国民の多くが紙よりもデジタルに信頼をおき、情報公開も進んでいながら、電子政府の仕組みは一極集中することなく、高いセキュリティも確保されています。

対して日本においては、マイナンバー制度が導入され、デジタル社会に舵を切り始めたものの、利便性よりも個人情報などに対する不安の声のほうが多く聞かれます。国の規模が異なるエストニアと日本を単純に比較することは難しいですが、ビジネスパーソンでもあるパパはどんな感想をお持ちですか。

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